アパ・マンを「死産」にはしていけない 争続対策 part2

前回は遺産分割の大切さについて解説した。

相続が起こった場合、10ヶ月以内に遺産分割協議が整わないと2つの大変大きな特典が使えなくなるのであった。

2つの特典とは小規模宅地の特例と配偶者の税額軽減の特例である。


これらの特典が使えないと納める相続税が大きくなるという面で大きなデメリットである。

しかし、この他にも遺産分割協議が整わないことによるデメリットがあるのだ。

そのデメリットとはズバリ、アパ・マンが資産ではなく、「死産」になってしまう、ということである。

今回は遺産分割協議が円滑に行われないとなぜアパ・マンが資産ではなく、「死産」になってしまうのかについて解説したい。



遺産分割協議が整わないでいる間は、とりあえず相続人全員の共有持分で登記して所有することになる。共有という状態は複数の人が同じ物に対して所有権を持っている状態のことをいう。

共有という状態はアパ・マンを経営する上でマイナスでしかない。なぜなら共有だと維持管理の責任の所在があいまいになり、アパ・マンの収益が悪化していくからである。

具体例で考えてみよう。
あなたは兄弟二人とともにアパート1棟とその敷地を相続することになった。しかし、遺産分割の協議は難航し、共有で所有することになった。あなたはこのアパートの所有権をもっている。兄弟の二人もあなたと同じくこのアパートを所有、売却する権利をもっている。

そのアパートが老朽化でしだいに空室が目立つようになったため、あなたは100万円の費用をかけてここのアパートをリフォームしようと兄弟にもちかける。ところが兄弟たちは価値観やアパ・マン経営に対する考え方の違いから費用負担を嫌がり、リフォームに反対する。

あるいは、あなたがアパートを建替えたいと考えることもあるだろう。資金は基本的に融資でまかなうことになるから、共有者である兄弟全員が担保を提供しなければならない。しかし、土地を担保として提供するのに反対する兄弟もいるから建替えすることもできない。

こうして老朽化したアパートを放置すれば空き室が増えていくばかりになる。こうなるとアパートを売却することも難しい。

こうして資産が「死産」になるのである。

仮にあなたが単独でマンションを相続したとする。単独であれば建替え・修繕・売却に他の相続人の同意を得る必要はない。建替えや修繕、売却を自分で決定できるという意味でアパ・マンが「死産」になることはないのである。

もし、アパ・マンを次の世代に残したいのなら、共有で相続させるという事態だけは絶対に避けねばならない。そのためには、必ず遺言をしておくことだ。それが資産を後世に残すものの義務なのだから・・・。